2019年11月22日 セラミックス専門家 江尻
セラミックスの素材を選ぶ際、強度を高めて耐熱性や熱伝導率を重視するなら、炭化ケイ素がおすすめです。炭化ケイ素はダイヤモンドに次ぐ硬さを持ちながら、ヤング率が高く変形しにくい特徴があります。
1,000℃以上の高温域でも強度が低下耐熱性や熱伝導率を求める部品や、半導体としても炭化ケイ素がおすすめです。炭化ケイ素の用途を確認しておけば、最適な素材が選べるでしょう。
炭化ケイ素は、高硬度・高ヤング率・耐熱性・熱伝導率のよさの特徴があります。純度が高くなると無色透明ですが、工業製品で使用するものは黒色の炭化ケイ素が一般的です。
炭化ケイ素は、金属や鉱物の中でも硬い素材です。強度は、サファイヤよりも高く、同じくセラミックのひとつアルミナより硬さがあります。炭化ケイ素が硬いということは、同時に耐摩擦性も持つのが特徴です。
地球上で5本の指に入る硬い素材として知られるダイヤモンドと比べると炭化ケイ素の硬度は落ちますが、セラミックスの中ではかなり高いほうだといえます。またほかのセラミックス素材と比べて、炭化ケイ素は1,000℃以上の高温域でも強度が低下しません。
炭化ケイ素は硬い素材なだけでなく、ヤング率が高くひずみにも耐えます。ヤング率とは、物体を変形させる力が加わったときに、復元率を示します。炭化ケイ素のようにヤング率が高ければ、圧力がかけられても物体は変形しません。炭化ケイ素のヤング率はサファイヤより劣りますが、アルミナより高いです。
耐熱性としては、空気中で1,500~1,600℃まで耐えられます。曲げに対しては、高温下の1,200℃でも強さを維持するのが特徴で、高温での耐酸化性も兼ね備えます。
炭化ケイ素は、金属に似た熱伝導率のよさが特徴です。セラミックスの中でも窒化アルミニウムや炭化ケイ素は熱伝導率が高く、焼結体の炭化ケイ素は270W/m・Kの熱伝導率があります。炭化ケイ素の熱伝導率の高さは、金属に匹敵する性質を持ちます。
炭化ケイ素は硬度が高く熱にも強い特徴を活用し、さまざまな部材に用いられています。さらに熱伝導率のよさを活かした活用方法もあるのが特徴です。
炭化ケイ素の高い熱伝導率から、最近ではセラミックヒーターの部品に使われています。セラミックヒーターは、温風を送り部屋を暖めるファンヒーターのひとつです。
電気式で灯油やガスなどの燃料は必要なく、コンセントにさせばすぐに付くヒーターです。灯油やガスの暖房器具と比べてパワーは弱いのですが、洗面所のような狭いスペースなら十分活用できるでしょう。通常ファインセラミックスは電気を通しませんが、炭化ケイ素は半導体であり、高温・高線量の環境でも使えます。高温下では500℃まで使用できる高温半導体の開発も進んでいます。炭素ケイ素の電気抵抗は、抵抗領域から絶縁体に近い領域までです。またシリコンに比べてバンドギャップが広く、絶縁破壊電解が高い特徴があります。
炭化ケイ素は耐薬品性を持ち、腐食しやすい物質を流す配管やノズルなどの部品にも使われています。高純度な炭化ケイ素を用いれば、接着剤不使用で配管などの部品を接合することも可能です。複雑な形状にも対応しやすく、部品のコスト削減にも炭化ケイ素が使われています。
また、炭化ケイ素は高温での膨張も少なく、部品の信頼性向上に役立つでしょう。配管に通す薬剤は、アルカリや酸でも問題ありません。熱したフッ化水素酸と硝酸を混ぜたものや、高濃度の水酸化ナトリウムも使用できます。
釣りで使用する釣具糸道とは、穂先から仕掛けまでを結ぶ部分のことです。釣具糸道は強度が求められる部品で、摩擦力も高めなければなりません。さまざまな素材が使われていますが、炭化ケイ素を用いることで強度が高く、壊れにくい素材として活用できます。炭化ケイ素はステンレスと比べて軽量なことから、軽さを重視するフレームと相性がよいです。
また炭化ケイ素の耐摩擦性は、ブラストノズル・埋設管防護板・ショットブラスト用ブレードにも向いています。ショットブラストは高速で回転させる歯車を使っており、歯車の部分に炭化ケイ素を用いると耐用性が高まります。
ご不明な点はプロにご相談ください!
他のブログを読む