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2019年11月22日 セラミックス専門家 江尻

セラミックのクリープ現象とは

セラミックスを使用すると、クリープ現象による強度低下が気になることがあります。クリープ現象が起こる原因は、転位の移動・結晶粒界の滑り・強度低下・副成分相の軟化です。この3つを理解することで、クリープ現象によるセラミックの強度低下をできるだけ防ぎましょう。本記事で詳しく解説いたします。

・セラミックのクリープ現象とは?

セラミックスのクリープ現象とは、変形が一定応力のもとでも時間と共に増加する現象です。熱による変形は進行します。金属も同じです。

クリープ現象は、簡単にいうと時間の経過でもろくなることです。硬くて丈夫な素材である一方で、セラミックスは長く使うと疲労が蓄積する特徴があります。

・セラミックスは陶磁器など古くから使われてきた素材

セラミックスとは、無機物質を原料とし熱処理により製造する製品のことです。今から1万7,000年前から使用されており、長い間、人と深い関わりのある素材です。

セラミックスは幅広い意味を持っており、耐火レンガ・ガラス・セメント・陶磁器なども含みます。耐熱・耐摩擦・耐食・耐薬品にすぐれ、高強度なことから、セラミックスは金属やプラスチックより優れているように感じられますが、衝撃や温度変化に弱く壊れやすいデメリットがあります。

・クリープ現象が起こる3つの原因

セラミックスのクリープ現象は、3つの原因が考えられます。転位の移動、結晶粒界の滑り、副成分相の軟化でのクリープ現象です。それぞれの特徴を理解し、セラミックスの硬度低下を防ぎましょう。

・1. 転位の移動

転位の移動とは、塑性変形がおきることです。金属のように圧をかけると変形することをいいます。一方でセラミックスのように硬い素材は、金属のように圧をかけると壊れるのが特徴です。しかしセラミックスでも金属と同様に、原子配列が局所的にずれる現象が見られています。もともとセラミックスは転位で動かすことが難しいのですが、高温になると転位の動きがあります。

また本来塑性変形がおきないのがセラミックのメリットですが、逆にデメリットでもあります。金属のような塑性変形による疲労は生じにくくても、まったく起きないわけではありません。セラミックの疲労は、時間とともに静疲労をおこす特徴があります。

また、繰り返し使うことで、動的疲労や繰り返し疲労が起こります。その証拠に、セラミックスのひとつガラスも静疲労や繰り返し疲労がおこることが知られています。

・2. 結晶粒界の滑り

セラミックスは結晶粒の滑りがありえます。しかし多結晶では、結晶粒を妨げる方向に別の結晶粒が存在し、それほど結晶粒の滑りは容易ではありません。どちらかというと結晶粒の滑りよりも、全体の変形が見られることが多いです。

セラミックスも結晶粒の集まりでできているため、時間の経過とともに滑りがおこればもろく壊れやすくなります。

・3. 副成分相の軟化

セラミックスは、天然原料を精製し製造したものです。一方で、人工に合成した原料を用い、天然にはない化合物で製造したものをファインセラミックスと呼びます。

同じセラミックスでも副成分を含んだものは、副成分自体の軟化により、セラミックスのクリープ現象がおこることがあるため注意が必要です。

中でもファインセラミックスは、原料の種類や粒の大きさを変えて、独自の特徴を持たせています。たとえばアルミナ・ジルコニア・窒化ケイ素・炭化ケイ素などです。それぞれの素材により強度や耐熱性を高めたものもあれば、軽量で腐食性に優れたものもあります。その一方で素材により疲労度合いが異なってくるため、デメリットを把握しながら使い分けが必要です。

アルミナは粒界割れしやすく、純度によってもクリープ現象の違いが出ます。ジルコニアでも副成分の度合いによっては、静疲労や繰り返し疲労による強度が低下するのが特徴です。静疲労や繰り返し疲労による強度低下は、部分安定化ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素の順で低下します。

また、炭化ケイ素は高温での使用が可能なのが特徴です。逆に強度低下が大きくないのは、非酸化物系の窒化ケイ素や炭化ケイ素です。セラミックスの強度が低下しやすい形状で使用する場合は、適した素材を十分比較するようにしましょう。

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